さむがりがさむいところへ

スウェーデン北部にある小さな町、ウメオに1年留学をすることになったので、日々の写真とマンガ日記と思ったことメモと教育実習日誌

6月5日 さむい国での最後の夜

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棚に並んだ絵本や色鉛筆をスーツケースに詰めて、お気に入りのランプもふとんカバーも外して、壁にぺたぺた貼ったカラフルな樹のデコレーションもきれいさっぱりなくなって、

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来たときと同じように、部屋はさらっとからっぽになりました。

もうここは、私の部屋じゃない。

 

 

 

時刻は夜の10時51分。

ウメオで書くブログもこれで最後になのかと思うと、ちょっと泣きそうになります。

机に座って、スマホにつないだキーボードでGoogle documentにせっせと打ち込んでいます。あとでパソコンが借りれたときに、ブログにコピペして投稿しようと思います。

 

机は窓のすぐ横に置いてあるので、たえず視界に外の景色が入ります。

空はもさもさ曇っているけれど、まだ水色です。どんより、というには色が綺麗だし、わずかながら雲の切れ間も見えるし。でも、スウェーデンで見る最後の日没が隠れてしまっているのは、少し残念です。



寮も大学も人がどんどん減って、とても静かです。ときどき、家の前を車が通り過ぎるぐらい。あとは、ひたすら私がぱちぱちキーボードを打つ音。

 

昨夜天井の電気を外して、今日相模に引き継ぎ荷物として預けてしまいました。なので、部屋の中は薄暗いです。でも机の上に小さいランプがあるのと窓からの光で、文字を打つのには困りません。

机の上には、持ち歩きなんでも帳と、手帳と、キーボードの箱と、ミルココーヒーが入ったマグカップと、ペンが何本か転がっています。一度にいろんなことをやりたがる私には、この天板が大きい机はとても便利でした。

 

ひたすらひたすら、ずっと情景描写をしていたい気分です。

自分の気持ちはよくわからないから、それよりはこの部屋の様子を、明るい夜の雰囲気をはっきりと文字に残しておきたい。たぶん、なんでもない写真を撮るときと同じ。後からまたこの空気に触れられるようにしたいと思うのです。



今日は寒い一日でした。

今も部屋の細い換気窓を開けていると、そこから冷たい風が忍び込んできます。手が少しかじかんできました。

 

さすがに現地の方でも、今日はとくに冷える一日だったようです。昼間の中心街でも、ダウンのコートや分厚い上着を着ている人を多く見かけました。

私はもう厚手の上着類はスーツケースに押し込んでしまっていたので、仕方なく薄手の上着一枚だけ羽織って過ごしていました。

しかも夜の記念撮影では(劇団で友達になったプロカメラマンの子が、帰国するメンバーをひとりひとり撮影してくれることになったのです。新緑の公園でモデルさんみたいにたくさん写真を撮ってもらいました。)、半袖ワンピース一枚で1時間弱耐えねばなりませんでした。広い公園は風を遮るものがなく、とても寒かったです。それでもにこにこと楽しく過ごせたあたり、自分がいかにこの町の気温に適応したかを感じました。

さむい国へ来て10ヶ月。私はもう、さむがりではなくなったのかもしれません。



やっぱり少しだけ、心境も書いておこうと思います。

 

ほんとうは、まだまだ帰りたくありません。

もっと詳しくスウェーデンの教育システムやポリシーを勉強したいし、心理学の授業ももっとたくさん撮りたかったし、スウェーデン語はまだ日常会話レベルに達するには練習が必要だし、劇団にも残って次のイベントを一緒に作りたいし、何より、ウメオの町でもう一周季節を過ごしたい。やり残したことはないけれど、もっと突き詰めたいことを挙げればきりがありません。

 

さらに正直に言えば、日本に帰ってからの楽しみが少ないというのもあります。

授業に参加できるのは後期からで、それが始まるのは10月後半。あと4ヶ月も、どうすればいいんだろう。

授業が始まったって、私は元のクラスには戻れない。もう大好きな友達たちとテスト対策したりわいわい模擬授業したりできない。

いちばんの楽しみである学習支援サークルも、テコンドー部も、地元で自動車学校に行かなくてはいけないからなかなか参加できないだろうし。そもそも自動車学校というものが嫌で仕方がないし。

つい、愚痴ばかりになってしまいます。

 

もちろんうれしいことだって、たくさんあるのです。

妹に会える。またお風呂で一緒に歌って、布団をならべて眠れる。毎日おばあちゃんの夕ごはんが食べられる。

友達に会える。またお泊り会したり、学食で駄弁ったり、ただただ一緒にいるだけで楽しい時間が過ごせる。

好きなだけ家のピアノが弾ける。道場に行けば、自分のやりたい、きれいなテコンドーを教えてもらえる。図書館に行けば、本は全部自分の言語で書かれていて読み放題。

家には炊飯器があるし、お刺身が食べられるし、調味料探しに困ることはないし、くら寿司あるし牛庵あるし。

いいことは、いっぱいあるはずなんです。なんだかんだ帰ったらとっても楽しいはずなんです。

 

なのにな。

帰るのが嫌なわけじゃないけど、帰りたくないと思ってしまいます。

それぐらい、ここでの生活はゆるくて楽しいことがありすぎて。

よくある話だけれど、留学の夢の世界から現実にはなかなか戻りづらいのだと思います。




10ヶ月、すごくすごく長かった。

長くなるだろうなと思っていたけれど、予想よりもずっとずっと長かった。1年間もなかったのが不思議なくらい。

 

その生活のなかで、いくつかよく思い返す日があります。

 

そのなかのひとつ、11月6日。スウェーデンの別の街に留学している友人がウメオに遊びにきた最終日。

遠い遠い日だと感じるけれど、よく覚えています。「ゆかな、ごはん行こう」って、まるで日本にいたときのようにふざけて言われて。私は、泣いたのです。

私日本に帰りたいです、あの日常に帰りたいです、とみっともなくぼろぼろ涙をこぼしたのを記憶しています。

 

「大丈夫、帰ったらちゃんと待っていてくれる人たちがいる」となぐさめられて、でもそんなのずっとずっと先じゃないかと思いました。あまりに先のことすぎて、結局は現実に来ることがないもののように思えました。

 

ええー、ほんとうに来たよ、というのが今の素直な感想です。

絶対来ないんじゃないかと思ってた。ほんとうに時間って経つんだ。ちゃんと来るんだ。

文字にすると当たり前のことすぎてなんとも薄っぺらくしか見えないけれど、私のなかではこれがずどーんと実感としてあったのです。

 

留学が終わること。

始まるときよりも実感があります。

明日からもうこの部屋にただいまを言うことはないし、窓からの風景を見ることも二度とない。

大学への小道も、小奇麗なキャンパスも、ICAスーパーも、中心街の時計も、こんなに毎日見慣れて、染みついていたのに。もうこれからの人生、ちらっと訪れることすらない可能性が大きいわけで。

そりゃ、さびしいです。

とってもとってもかなしい。



まだ街や人に対する感謝とか、自分が留学生活でやりたかったことの振り返りをゆっくりやる余裕がありません。

ただただ片付けにバタバタしながら、かなしい気持ちになっているここ数日です。



またいろいろ整理しながら、書こうと思います。

写真だけアップロードして本文を仕上げていないブログ記事も多いので、そのへんもさりげなーく書き加えておきます。

その他付け足したい情報やら何やら、後からコソコソ更新するかとは思いますが…

とりあえず、留学記は今日で最後です。

 

読んでくださった方々、ほんとうにありがとうございました。f:id:yukana777:20180614183440j:plain